ボーナスステージ三軒茶屋

高田馬場から引っ越した後、大須観音からも引っ越しました。

転職をしました/最近読んだ本

◆転職しました

新卒から6年間つとめた会社を退職し、都内の20人足らずの会社に転職しました。前職はグローバルで5,000名くらいの会社だったので、相当にスケールが小さくなりました。商材も前職の1,000万円〜というレンジから、1契約あたり100万円〜というレンジになり、それに反比例する形で営業やカスタマーサクセスのスピード感が異常に早い、という経験をしています。家は大須観音から三軒茶屋に引っ越したので、ブログのタイトルも変える必要があります。転職から二週間経ったので、なぜ転職に至ったのかを書きます。

 

◆「わかってやっている感」を大事にしたかった

半年くらい前から、自分の会社が何をやっているのか、何をメリットに何を売って、これから何のメリットをお客さんに与えることができる(見込みも含めて)のか、よくわからなくなることが増えました。自社やサービスに対するネガティブな世の中の物言いに、アテられていたのかも知れません。

会社の体が大きいからなのか、上意下達の下手くそさからなのか(多分両方)、従業員に対してのアカウンタビリティを満たしていない状況が長く続き、「自分は、自分の会社のこともよくわかっていないのに自信満々に働けるのか?」と考えるようになりました。同じような考えに至った人の中には、「じゃあ会社の中枢に食い込もう、改革しよう」という人もいましたが、自分はそういう発想を実行に移すビジョンがありませんでしたので、必然的に「会社を離れよう」という結論に至りました。

で、転職するにあたって、「何をやっているのか、これから何をやるのか、納得できる商売をしているか」の軸で会社を探していたところ、今の会社にたどり着いたという経緯です。

今の会社は、ある程度一般化してきた(けどまだ世の中の常識というほどではない)技術を使って、既存の人力労働を自動化しよう、というビジネスをやっています。もちろんプログラミングの中身まで何が書いてあるか、とかは流石にわかりませんが、人数も少ないことから、誰が何を考えてどういう意思決定をしているのか、前職よりも格段に見えやすい(かつ、意見がとてもしやすい)ので、転職してみてよかったなあ、と感じています。

 

 

◆非バトルタイプとして

前職で5年間、高額なIT商材を売り歩いてみて、振り返ってみて思ったのは「自分は戦闘タイプではない」ということでした。これは別に絶望的な気付きというわけではなく、むしろ非常にストンと腹落ちしました。自分はバトルタイプではない、RPGのジョブで言えばむしろモンクとか、ヒーラーに近い役回りの方が、自分の周りの世の中がうまく回るかも、と考えたのです。何も非戦闘タイプが"戦っていない"というつもりはありません。剣を振らなくても、銃を撃たなくても戦うことができる、という気付きは自分の中ではとても大きく、それは戦闘職を5年やってみたからこそ気付けたことなので、あらゆる意味で前職には感謝しかありません。

で、今なにをやっているかというと、「カスタマーサクセス」の仕事をしています。長期的には自社サービスを使った顧客の成功に寄り添い、課題を見つけてきてさらにサービスをよくする、みたいなことですが、なにせ現状はまだ顧客の満足度を測ったり、顧客の成功のKPI をどこに置くか、みたいなこともこれから決める、という感じなので、日々あたらしくやることが見つかる、みたいな状態です。自分が納得するように、会社が納得するように、顧客が納得するように、考えることばかりなので非常によい環境だと思っています。

 

 

趣味の話。前職をやめて一週間、有給休暇を消化していたので、本を読む時間が豊富にありました。以下は3月から今までで読んだ本。

 

◆マーヴィン・リン:KID A

趣味→音楽。2000年のradioheadのアルバム「KID A」について、あらゆる角度から分析を行ない「KID Aとは一体なんだったのか?」を解き明かそうとする試みの本です。この本でKID Aの全てが解き明かされた!という感覚は正直あまりないですが、確かにKID Aのリリース当時には私はThe Bendsがradioheadの最高アルバムだと思っていたし、ブリットポップにどっぷりはまっていたし、weezerも大好きだったので(この本の中で、リヴァースがradioheadの音楽を理解しなかった人として紹介されていたのも面白い。曰く「(radioheadの)サウンドは、MUSEに似てると思う」)、今更になって思うけど「なんでKID Aのことを好きになって、今でもすごく好きなのか?」はこの著者とすごく共有できたと思います。「僕は本当にこの作品が好きなんだろうか、実は闇雲にレディオヘッドを崇拝しているだけなのでは?(本文:75頁より引用)」。

時間が経って、その間受容し続けて、結果として好きになったり良さがわかったりする、というコンテンツがある。私の中ではradioheadがそうだし、例えばタルコフスキーがそうだし、例えばグレッグ・イーガンがそうだ。それが他人にとって最後まで意味のないものだったとしても、自分が好きならば仕方ない。面倒くさい人種には、キャッチーなだけではだめなのだ。

「俺達は陰謀論者じゃない、これは本当に起こっていることなんだ。

金を持って逃げろ!」(Idioteque / radiohead

 

◆ケン・リュウ:生まれ変わり

趣味→SF。「紙の動物園」でSF三冠を達成した作家の短編集。文体が非常に心地よいのと、題材や発想の新奇さがすごい。中でも「生きている本の起源に関する、短くて不確かだが本当の話」をとても面白く読んだ、ここ2年くらいの自分のSFトレンドが「ことばと理解」にあるからか、飛浩隆円城塔中島敦とかとの共通点を探してしまう。そう言えばこの手の最高の話は飛浩隆の「自生の夢」という短編だと思う。多分このジャンルにはまったきっかけは伊藤計劃の「虐殺器官」からだと思うので、身近なSFファンと語り合いたいけれどもSFファンの友達が見つかりません。

「文章にこめられた意味は常に、読み手がすでに持っている知識や予想によって、解明される」(本文163頁、ルイ・メナンドの言葉より引用)

 

冲方丁:マルドゥック・アノニマス

どんどん面白くなるSF長編。巻を追うごとに人物の(主にバロットの)心理描写が繊細になってきて、たまらない気持ちになる。またどんどん頼もしくもあるので、スクランブルの最高潮(ブラックジャックのシーン)に近いコミュニケーションが随所に出てきて非常にワクワクする。早く5巻出てくれ・・・!

 

◆伊藤洋志:ナリワイを作る

転職について考え始めた時に実家に置いてあるのを見て、3月に購入して読みました。先述した戦闘タイプとか云々の話は、この本からかなりインスピレーションを受けました。

 

◆ニック・メーダ:カスタマーサクセス

仕事の本。趣味ではないので特になし。大変勉強になるし、仕事中にこの本のことを思い返したり、読み返したりよくします。カスタマーサクセスの土壌がない(これから作っていく)フィールドにおいては、教科書的な存在になってくれています。とはいえ道を知っていることと、実際に歩くことは全然違うことなので、日々模索です。